(2)薬物治療、治験について
1999年に最初のALS治療薬としてリルゾール(商品名:リルテック、現在後発品薬もあり)が本邦で保険診療上認可されましたが、その効果は限定的で、疾患の進行を2〜3ヵ月遅くするというものでした。リルゾールは内服薬で、食事による脂肪吸収で薬の吸収が低下することから、朝・夕食前に服用する必要があります。リルゾールの添付文書には、米国神経学会の勧告では、下記の1)~4)を満たす患者への適用を推奨すると記載されています。1)世界神経学会の診断基準(他の原因によって進行性筋萎縮となった場合は除く)で“definite”または“probable”であること、2)罹病期間が5年未満であること、3)努力性肺活量が理論正常値の60%以上であること、4)気管切開未実施例であることとの記載があり、発症5年以上の患者、気管切開をして人工呼吸器を使用している患者には、保険診療上使用が認められない場合があります。
リルテック認可後16年経った2015年に、第2のALS治療薬として、エダラボン(商品名:ラジカット、先発品のみ保険診療が認可されている)が本邦から発表され、今や世界中で認可されつつあります。これは注射薬ですが、近いうちに懸濁内服薬が開発されるとの情報があり、頻回の注射に比べて導入しやすくなると考えられます。
その他、HGF(肝細胞栄養因子、東北大学と大阪大学で治験中)や、大量メチルコバラミン療法、抗パーキンソン薬として認可されているロピニロール(商品名:レキップ)、ボスチニブ水和物錠、各種遺伝子治療等、近年続々と治験(新しい「くすり」が国の承認を得るために安全性や有効性を確認するために行う臨床試験のこと)研究が開始されています。
治験には、ALSの国際診断基準を満たし、発症1〜2年目以内の早期で、各種除外基準(呼吸運動系麻痺がなく、歩行可能等)を満たし、観察期間中の病気の進行度も考慮して、初めて参加が可能であることを理解しておきましょう。また無作為二重盲検試験といって、参加者が必ずしも治験薬の治療群に割り当てられるとは限らないことも知っておく必要があります。これらの治験薬剤の治療効果が確立されれば、主治医と相談して導入することもできるでしょう。一方、藁にもすがる思いで、海外まで出かけまだ確立されていない新規治療を行うことは、身体的にも経済的にも負担となるので、主治医によく相談して選択すべきです。
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