みんなができるリハビリ技術! 身近な関わりからできること:茨城県支部

レクチャータイム
「みんなができるリハビリ技術! 身近な関わりからできること〜」

 講師:下村哲志(理学療法士)

皆さん、こんにちは。理学療法士をしております下村と申します。

今日のテーマは「みんなができるリハビリ技術 身近な関わりからできること」とさせていただきました。

普段みなさんもいろいろな形で患者さんに関わってくださっていると思います。

患者さんの体を動かしている際に、急に身体が動いてしまったり、痛そうな顔を非常に心配になりませんか?その不安を少しでも解消するためにはちょっとしたコツがいろいろとあるんじゃないかなと思い、それをみなさんと共有できればと考えています。

だんだん動けなくなって、皆さんが心配になることといえば、 やはり筋力が落ちてくる、身体が硬くなってくる、自分で動けな いことによって床ずれなどが生じてしまう、等ではないでしょう か。こういうことが生じてくると皆さんを含め周りの方々の介護 負担が増えてきてしまいます。それを防ぐためには何が必要なの か?結局のところ身体をよく動かすことが重要になってきます。 その身体を動かすときのポイントについてお話をさせていただき ます。

 

まず最初に足首の動き。足首を動かさなくなると、足先の冷たさを感じる方は多いですし、座っている姿勢、もしくは立ったときの姿勢のとりにくさに繋がります。そんな時にどのように動かすのか見てみましょう。足首を動かさなくなると、つま先が下に向いた形で硬くなってくるのは皆さんもよくご存知だと思います。ALS患者さんの場合、この足首をぐっと動かすとガクガク動いてしまうことがよくあります。「あっ、これは大変だ」と心配になるかもしれませんが、しっかり足裏全体を押さえて伸ばしてあげることが大切です。ガクガクは心配ありません。

また、普段はあまり意識をしない部分ですが、足の裏は非常に血流を保つ意味では重要な部位です。よくマッサージをやってあげるのも1つですが、ぜひやっていただきたいのが足の指を縦方向に1本ずつほぐすように動かしてください。普段の動きにはない横の動きは非常に気持ちいい動きです。ぜひ足首を反ったりする動きの他に、足の裏から指を1本ずつ掴んでいただいて縦に動かす動きもやってみてください。

もう1つ身体が硬くなってきて、介護負担の増加を招きやすい部位として股関節・肩関節が挙げられます。いずれも元々は大きな動き持っている関節なので、動きが制限されてくるとどんどん介護がしにくくなってしまいます。まず、股関節はとにかく大きく回してあげてください。その際足首と同様にガクガクと動いてしまうかもしれませんが、こちら大丈夫です。ゆっくり動かすことによって脚が開かなくなってくることによって、おむつの交換等の介助の負担が増えるのを予防できるのです。

そして肩関節ですが、こちらは痛みを生じやすいデリケートな関節でもあります。そのため動かし方にコツが必要なのです。まず動かすときは前も横も90度まで動かしてみて、痛みの出現、動きの範囲を確認することが重要です。もちろんそれ以上の動き が保たれるのが望ましいですが、まずは90度を保てるように動かしましょう。

 

もう1つ大事になってくるのは、肩を回す動きです。洋服を着る際には必ず肩を回す動きを伴います。反対の手で肩を包み込んで動かすことによって肩関節に余計な動きが生じることなく動かせるので、痛みは生じにくくなりますし、動かしている側の不安も少なくなると思います。そしてゆっくり回してください。反対側の手で肩を包み込んであげる、これが大きなポイントになります。そして肩まわりを動かしていただくときにやっていただきたいのが、肩甲骨を大きく動かしてあげてください。手を背中側に入れて指先を肩甲骨の内側に引っ掛けて、グーっと上に引き上げて大きく回すように動かしてあげると、非常にこれは気持ちいいはずです。

この動きは側臥位で行うとより効果的に動かすことができま す。人工呼吸器を装着している患者さんを側臥位にすることは非 常に大変だと思いますが、横向きは患者さんにとって大事なひと 時になるのは間違いないと思います。

あと、ぜひ横向きになった時には背中にパタパタと空気を入れてあげてください。「え、なんで?」お思いになるかもしれませんが、我々は普段何気なく、寝返りとか をやって背中の部分に空気が入るような動きを無意識的にやっています。

でも自分で動けない方は背中に空気が通る瞬間がほとんどない のが実情です。そうなると特に夏場だとそこに汗疹ができたり、汗が溜まってしまったりしてしまいます。横向きになった時が1番背中が開放される時なのです。是非こちらもお試しください。

もう1つ側臥位で行えるストレッチとしてゆっくり身体をねじっています。呼吸器がついていると引っ張られそうで心配かもしれませんが、回路に注意しながらゆっくりとやっていただくと胸の方がしっかり伸びてくるのを感じることができます。普段は縮こまってしまっている大胸筋と呼ばれる部分をのしっかりストレッチできます。大胸筋が伸ばされると呼吸のしやすさにも繋がります。

あと手の指先です。指は動かさないと伸びた状態で硬くなってしまうことがよくあります。指先も非常にデリケートな部分なので1本ずつ丁寧に曲げ伸ばししてあげてください。それに加えて足の裏でご説明したのと同様に指を1本ずつ縦に動かしてあげてください。この動きは自分ではやることができない動きですし、指の血流が良くなって指先の動かしやすさにもつながっていきます。是非指を曲げるだけではなくて、縦の動き、指1本ずつを分 解するようなイメージでやってみてください。

あとよくALS患者さんのリハビリをやっているとき「呼吸に合わせてどんな動きをしたらいいですか?」とご質問をいただきます。リハビリの様子を見ていると深呼吸を促すようにするときに、グーっと押している姿をご覧になることがあると思います。 これは少し胸郭を押すことによって息を吐きやすくする、さらには息を吸いやすくすることを目的としており、深呼吸をしやすくするお手伝いをしています。ただ肋骨はそれほど頑丈なものではないのでやみくもに押すことはお薦めできません。では何をするのか?呼吸の動きに合わせて手を添えてあげてください。呼吸に合わせて、深呼吸を促すと不思議なことに手を離した時にスッと息は吸えるようになります。手を置くだけで呼吸は楽になります。

また咳払いをする時、我々の身体はグッと腹筋に力が入って、咳払いをより強くするようなはたらきがあります。でもALS患者 さんの場合は腹筋背筋に力が入らないため咳払いが弱くなってしまい、痰が出しにくくなります。「せーの」(ゴホンっ)「せーの」(ゴホンっ)と咳払いに合わせて手を当ててるだけで咳払い強くなり、痰の出しやすさに繋がります。

どうしても身体を動かそうとする時に、痛い顔をされた時、急な動きがみられた時はどうしても「ハッ」と心配になってしまうと思います。ただその心配をしながら身体を動かしている姿からその不安は患者さんに全てに伝わってしまいます。でも皆さんの日々の関わり、そして触れ合い、それは本当に大事なものです。皆さんがやっていることは間違いない!自信を持ってください。普段やっていることをほんの少し身体の動かし方、もしくは身体 の使い方を変えることで立派なリハビリに変わってきます。少しずつのコツを確認しながら関わっていただくことが皆さまのより良い療養に繋がればと考えています。
ありがとうございました。

※このレクチャータイムの内容は、YouTube「日本 ALS 協会茨 城県支部」のチャンネルにて、動画配信をしていますので、ぜひご参考にしてみてください。

「日本 ALS 協会茨城県支部」チャンネルの URL です。

 

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